車より飛行機の方が怖い?

飛行機恐怖症とは

突然ですが、あなたは飛行機に乗ることに恐怖がありますか?私はないのですが、飛行機が苦手な方は結構います。その理由も様々であり、狭いところが苦手な閉所恐怖症であったり、高いところが苦手な高所恐怖症が原因で怖いと感じる方もいるでしょう。中でも飛行機への恐怖心の中でも特に大きいものとして、事故が起きたらどうしようという怖さではないでしょうか。巨大な鉄の塊が突然空中分解する、あるいは故障やテロにより墜落すれば、助かる見込みはほぼないでしょう。

 

ナショナルジオグラフィックチャンネルが放送している「メーデー!:航空機事故の真実と真相」という航空機事故を扱っているドキュメンタリー番組があるのですが、パイロットのミスや整備不良、悪天候といったように様々な原因によって起きてしまった悲惨な航空機事故について詳しく扱っています。この番組を見ると余計に飛行機が怖くなりそうなので、飛行機に対して恐怖心がある方はあまり視聴することをオススメしませんが、個人的には何が原因で事故が起きてしまったかを知ることがおもしろいためついつい見てしまいます。

 

話が少し逸れてしまいましたが、残念ながら航空機事故というものはどうしても0にすることはできないものです。どれだけ技術が進歩しても、やはりどこかで事故は起きてしまうものですが、果たしてその事故が自分の身に起こる確率について知っている方はどれほどいるのでしょうか。

 

航空機事故の確率

世界的に有名なボーイングの広報によると、現在では命に関わる航空機事故は200万便に1便であるとされています。365日毎日飛行機に乗ったしても、約5479年に一度しか自分の身に起こる確率しかないと言えます。

内閣府が発表した「令和2年度交通安全白書」によると、令和元年ではたった1人の死亡者しか出していないことが報告されています。負傷者に関しても、わずか12人でした。

アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)の発表でも、2018年の航空機による死亡事故は、飛行時間10万時間あたり1.029件であり、1時間あたりの確率では0.00001029%と非常に低い値です。

これらより、飛行機を造る会社側の視点からも、事故を調査する側の視点からも飛行機が極めて安全な乗り物であると言えるでしょう。

 

意外と遭う確率の高い交通事故

では、交通事故はどれくらいの確率で遭うのでしょうか。

警視庁のの統計によると、令和元年には461,775人もの負傷者がおり、3,215人もの人が亡くなってます。この年の日本の総人口は1億2616万7千人で、およそ0.0036%の確率で事故に遭うことがわかります。先ほど述べた飛行機事故の確率よりも遥かに高いです。

 

なぜ飛行機を怖がる人が多いのか

冒頭で述べたように飛行機の持つ特性、つまり閉所であり高所を高速で飛ぶという特性が飛行機を怖くさせる要因であるでしょう。しかし、新幹線も同様に一度走り出したら、自らの意志で止めたりドアを開けることもできない上、非常に高速で駆け抜けます。むしろ地上を走るため、窓からの景色は飛行機より新幹線の方が高速に感じるのではないでしょうか。

しかし、飛行機だけ苦手という人はいます。確率という明確な基準もあるにも関わらずです。私が今回考察したいことは、この確率がむしろ飛行機が安全かどうかを判断しにくくなっているのではないかということです。

確率加重関数

あなたは、宝くじを買ったことがありますか?もし買ったことがある方は、それが当たるかもと考えて買いましたか?もしかしたら当選して億万長者になった自分をきっと想像したことがあるでしょう。もし、ほんの少しも当たると思っていないのであれば、そもそも買わないはずです。

しかし、宝くじの高額当選の確率は本当にごくごく一部です。2018年の年末ジャンボ宝くじの1等当選金額は7億円でしたが、その当選確率は2000万分の1、つまり0.000005%です。なんなら飛行機事故よりも遥かに確率的には低いです。しかし、なぜ飛行機事故や宝くじ当選が自分の身に起きると感じてしまうのでしょうか。

 

もしあなたが難病にかかってしまったとします。その手術の成功率が95%と聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか?95%と言うとほとんどの確率で成功するのですが、5%は失敗するということです。おそらく、5%の失敗のことを考えてしまうのではないでしょうか。ほとんどの確率で成功するにも関わらず、わずか5%に怯えてしまうでしょう。

 

この2つの心理は確率加重関数というもので説明することができます。人間は客観的確率が0や1に近いところでは、主観的確率と客観的確率との差が大きくなってしまうのです。つまり、ほぼ0%に近いにも関わらずその確率を過大評価し、ほぼ100%に近いにも関わらずその確率を過少評価してしまう傾向が人間にはあるのです。

 

この確率加重関数、客観的確率がおよそ40%までは過大評価し、それ以上では過少評価をすると言われています。

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(手書きでの作図ですみません)

客観的確率は一定で高くなるのに対し、赤線と青線で表した主観的確率はカーブを描いています。このカーブこそ主観と客観の乖離を表します。約40%未満の場合、主観的確率よりも客観的確率が高くなりがちであり、赤線の部分がその差を表しています。反対に、約40%を超えたあたりから主観的確率は客観的確率を下回り、青線で表しています。人によってこの乖離は異なるため、具体的な数値は用いていませんが、確率加重関数をグラフで表すとこのようになります。

 

まとめ

人間は確率加重関数により、少ない確率を課題評価してしまいがちであると説明しました。この理由により、飛行機事故は客観的確率よりはるかに大きい確率であると人間は捉えてしまうと考えます。車などによる交通事故より飛行機事故が恐れられているのは、事故の凄惨さによるものではないかと考えます。一度事故に遭えば死に直結することが多く、衝撃も交通事故よりもはるかに大きいです。このような複合的要因により、飛行機を怖がる人が多いのではないでしょうか。

克服する方法として私が提案することは、まずは確率加重関数という概念を知り、客観的確率と主観的確率との差があることを認識することではないでしょうか。実際にはほとんど起きないにも関わらず、人間はその確率を過大評価してしまう、そのことを受け入れることで徐々に主観的確率が客観的確率に近づけるのではないかと考えます。閉所恐怖症や高所恐怖症の方の改善方法は、今回の趣旨とは少し逸れてしまうので省略させていただきます。

この確率加重関数、排出率が極端に少ないスマホゲームのガチャが出ると思い込んでしまう心理や、最近話題のコロナワクチンの副作用の確率など、他の確率を見誤る際の根拠としてもあてはまります。日常生活で、客観的確率と主観的確率の乖離を探してみるのもおもしろいかもしれませんね。

 

 

 

 

 

【参考文献】

(最終閲覧日 2021年4月2日)

 

Why Airplanes Are Safe | Travel + 

 

U.S. Aviation Fatalities Increased in 2018 

 

令和2年版交通安全白書 全文(PDF版) - 内閣府

 

道路の交通に関する統計 交通事故の発生状況 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

 

統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐

 

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